2008年11月7日金曜日

福祉現場の生の声伝える

2008年10月26日

 ◆福祉現場の生の声伝える--黒田孝彦さん(54)=大阪市天王寺区

 ◇希望ある職場へ「月刊誌」編集 社会の動きに敏感に対応したい
 高齢者福祉、障害者福祉、児童福祉、母子福祉と、縦割りに論じられがちな社会福祉を、総合的に研究する目的で88年に設立された大阪市天王寺区の「総合社会福祉研究所」(理事長・石倉康次立命館大教授)。同研究所が編集する月刊誌「福祉のひろば」の編集主幹を務めて4年になる。

 堺市の医療法人に約30年勤めた後、大東四條畷保健生協の介護事業部長などを経て05年、現職に就いた。

 同誌はもともと、府内で公設社会福祉施設を運営してきた大阪福祉事業財団の職員共済会が、実践記録集として79年に発行を始めたもの。福祉現場で働く人たちの生の声を伝えるとともに、急激に移り変わる社会環境の中、社会福祉の対象の多様化にも必然的に焦点を当ててきた。

 「短期連載『規制緩和とタクシー労働者』」--。ページをめくると、「福祉のひろば」という誌名から浮かぶイメージとはいささか異なるトピックを目にすることもある。「タクシー業界は青息吐息の現状で、運転手の年収はこの10年で4割も減った。福祉の観点で労働問題を見ることで、本誌の趣旨に合うでしょう」と話す。

 この連載の発端は、出先で乗ったタクシーに「生活臭」を感じたこと。取材を進めると、運転手の中には低収入で家賃に窮し、会社の休憩室で暮らしたり、極端な場合は車を半ば生活の場に使用している実態が分かってきたという。

 「夕張財政再建計画の実地検証と社会福祉のゆくえ」▽「新たな住宅なし貧困層の拡大」▽「若者はなぜ、福祉現場に来ないのか?」--。時事的な問題提起が目立つ。

 府北部で障害者を保護する救護施設の個室化計画が持ち上がり、住民説明会を開くと、「施設の入所者が自分たちよりいい生活になるのはどうか」という声が上がった、と取材で知った。

 「自分より低い生活レベルや処遇にある人がいることで、安心感を抱くという風潮の表れだ。ネットカフェ難民など福祉の対象となる“予備軍”の問題を社会全体が真剣に考えようとしない理由は、そこにあるのでは」と感じている。

 厳しい労働環境や介護報酬の改定などで、福祉の現場を離れる人は少なくない。だからこそ、福祉に携わる人たちに希望を与えるような雑誌であるとともに、社会の動きに敏感に対応していきたいと考えている。【

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